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「Every Life: わたしは生まれなおしている」東京都美術館
東京都美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園 8-36


 「上野アーティストプロジェクト」 は、「公募展のふるさと」 とも称される東京都美術館の歴史の継承と未来への発展を図るために、2017 年から始まった展覧会シリーズです。 毎年異なるテーマを設けて、公募展を舞台に活躍する作家たちを紹介しています。 その第5弾である今回は、「Everyday Life」 をテーマに、戦前から現代にいたる 6 名の女性作家を取り上げました。
 毎日の暮らしの中で出会う風景や物事、それらの記憶―。 そのような、自分自身のすぐそばにあるものへのまなざしを起点に、作家たちは多様な表現を生み出してきました。
戦前・戦後の美術団体で活躍し、身辺の事物を通じて自己そして社会と向き合ってきた物故作家 3 名と、身の回りに埋もれた様々な 「生」 の断片を拾い上げ、それらを留め、かつ再生させるかのような制作行為に取り組む現役作家 3 名の作品そして生き方は、わたしたちが 「日々生きること」 について、問いなおすきっかけを与えてくれるに違いありません。


会期: 2021 11/17 [水]2022 1/6 [木] 展覧会は終了しました。
休室日:2021 年 12 月 6 日(月)、12 月 20 日(月)―2022 年 1 月 3 日(月)
開室時間: 9:30― 17:30 (入室は閉室の 30 分前まで)
会場:
東京都美術館 ギャラリーA・C (上野公園内)
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館


同時開催 東京都コレクションでたどる〈上野〉の記録と記憶
会場:東京都美術館 ギャラリー B 観覧料無料

 上野恩賜公園内やその周辺に美術館・博物館・動物園が集まる文化的な地域として親しまれる一方、小売店や飲食店が密集するアメ横もその代名詞的存在である 〈上野〉 という土地。 さまざまな歴史の舞台ともなったこの地には、過去から現在まで多種多様な人々が行き交い、ここを題材とする数多くの作品や記録が生み出されてきました。
 本展では、東京都が所蔵する美術コレクションの中から、〈上野〉 に関連する約 60 点の作品・資料を展示します。 表現者たちをひきつけた 〈上野〉 の魅力を再発見いただき、かつてここであった出来事、そしてここに存在した人々にことを思うひとときをお過ごしください。 美術館を後にするとき、それまでとは違う風景が、あなたの目の前に広がるかもしれません。


   

'2021 11_17 上野アーティストプロジェクト 2021 「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」 合同 報道内覧会
2021_11月「PRESS RELEASE」 or 「Everyday Life: わたしは生まれなおしている」 カタログからの抜粋文でご紹介しています。

画像をクリックすると大きな画像でご覧いただけます。


・画像をクリックすると 「東京都美術館 高橋明也館長」 のご挨拶がご覧いただけます。

丸木スマNo.93《簪》原爆の図丸木美術館蔵

・No.93 丸木スマ 《》 1955 年 水墨彩色、紙、二曲屏風 175.0 x 182.0 cm
再興第40回院展 原爆の図丸木美術館蔵

上野アーティストプロジェクト
「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」東京都美術館
合同 報道内覧会 2021 11_17



Everyday Life : わたしは生まれなおしている

「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」 展覧会概要

 本展覧会は、 第 1 章~第 3 章までの 3 章立てで構成され、各章のテーマを戦前・戦後の美術団体で活躍した女性作家が各章 2 名ごと 計 6 名で 「Everyday Life」 にそった制作作品を展示し、「生」 の再生を問いなおしています。

第1章 皮膚にふれる 貴田洋子 KIDA Yoko、桂ゆき KATSURA Yuki
第2章 土地によりそう 常盤とよ子 TOKIWA Toyoko、小曽川瑠那 KOSOGAWA Runa
第3章 記憶にのこす 川村紗耶佳 KAWAMURA Sayaka、丸木スマ MARUKI Suma

'2021 11_17 上野アーティストプロジェクト 「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」 合同 報道内覧会の展示風景・展示解説、
Everyday Life : わたしは生まれなおしている」 カタログからの抜粋文でご紹介しています。

画像をクリックすると 「桂ゆき」 の作品がご覧いただけます。

第1章 皮膚にふれる 貴田洋子 KIDA Yoko、桂ゆき KATSURA Yuki

 身近にある 「皮膚におなじみの」 物体と丹念に向き合うことを通じて、自然や社会と対峙し続けた画家・桂ゆき(1913-1991)。 東京・千駄木で生まれ育ち、戦前から二科会を舞台に、また戦後は女流画家協会創立に参加するなど、女性が画家となることが困難であった時代から画壇において常に注目を集める存在であり続けました。 青森・大鰐町に生まれ、近世以降の津軽地方で野良着の補強と防寒のために発展・継承された津軽こぎん刺しを独学で身につけた貴田洋子(1949-) は、こぎん刺しの伝統模様や運針規則を厳格に守りながらも、その幾何学的画面の中に独自の技術で有機的な線を登場させるなど、表現のあらたな可能性を追い求め、ふるさとやこぎんを守り伝えた津軽の女性たちへの思いを大作で表現しています。 ここでは、桂の初期の小品、コラージュ作品から 1980 年代までの作品 13 点と、貴田の初期作から新作まで 16 点の展示します。 「皮膚にふれるもの」 から広がるそれぞれの作品世界をお楽しみください。

貴田洋子No.10《ふるさと・北の果てに舞う》No.11《ふるさと・まほろばの飛翔》No.12《岩木山・落葉木輝け》

左、・No. 10 《ふるさと・北の果てに舞う》 2016 年 糸、麻布/津軽こぎん刺し 160.0 x 135.0 改組新第3回日展 作家蔵
中 ・No 11 《ふるさと・まほろばの飛翔》 2017 年 糸、麻布/津軽こぎん刺し 160.0 x 135.0 第56回日本現代工芸美術展 作家蔵
右 ・No.12 《岩木山・落葉木輝け》 2019 年 糸、麻布/津軽こぎん刺し 160.0 x 135.0 改組第6回日展 作家蔵

貴田 洋子 KIDA Yoko 1949- (日展/現代工芸美術家協会)

 「こぎん刺し」 寒冷な津軽地方では木綿の栽培ができず、綿製品は高価であった。 1724 年(享保9年)の「農家倹約分限令」 により、農民は仕事着、普段着において木綿の使用が禁止され、紺麻布を着衣として用いていた。 藍染の麻布で作られた野良着の保温と補強のために木綿糸で麻に刺して、刺繍をして布地の目を埋めることで暖かい空気を着衣のなかに留めこむ、絹の使用を禁じられた土地の布であった。 布地の横糸、縦糸の目を数えながら、「奇数律」の組み合わせで、布の上に美しい幾何学模様が広がる。
貴田が本格的にこぎん刺しにのめり込むようになったのは、首都圏に居住するようになった 1985 年以降のことである。 2000 年前後から、こぎん刺しをパネル貼りした大作の制作に着手し、公募展に挑戦し始めた。 貴田は、モドコ (こぎん刺しの基礎模様) や奇数律というこぎん刺しの伝統をとても大切にしている。 元来幾何学的に構成されていたこぎん刺しの画面上に八咫烏や故郷のシンボル・岩木山といった自然界の表象を登場させ、さらには幾何学模様の連なりによる直線を 「破り」、従来のこぎん刺しには存在しえなかった有機的な曲線を浮かび上がらせる独自の技を編み出した。

「略年譜の抜粋」
1949 年  青森県に生まれる。 中学生の頃からこぎん刺しを独学していく。
1985 年  首都圏に移住後、こぎん刺しを本格的に始める。
2019 年  青森県弘前市に帰郷。
現在、日展会友、現代工芸美術館協会本会員

「個展、公募展の抜粋」
2000 年 現代こぎん創作展個展(ロイヤル・サロン・ギンザ・ギャラリー、東京)。
2007 年 第46回日本現代工芸美術展に初入選(以後現在まで入選)、巡回神奈川展で新人賞受賞、神奈川県展で特選受賞。
2013 年 第52回現代工芸美術展で現代工芸賞受賞、第44回日展東北青森展、第53回日本現代工芸美術展東北仙台展、第23回河北工芸展・JAL賞受賞。
2021 年 第8回日展第 4 科工芸美術で 《津軽・稔り輝く》 が特選受賞。

「パブリックコレクション」
弘前市民会館、青森県立弘前中央高校、弘前市役所  



画像をクリックすると 「小曽川瑠那」 の作品がご覧いただけます。

第2章 土地によりそう 常盤とよ子 TOKIWA Toyoko、小曽川瑠那 KOSOGAWA Runa

 生涯を横浜で暮らし、戦後の女性写真家の草分けの一人として活躍した常盤とよ子(1928-2019) は、1956 年の個展で発表された、横浜の赤線地帯に潜入した一連の作品で一躍脚光を浴び、その後も社会問題に強く関心を寄せ、女性、戦争孤児などを被写体に撮影を続け、後進の指導にも力を注ぎました。
 武蔵野美術大学卒業後、ガラス工芸の専門教育機関で学び、ガラスという素材と向き合い続ける小曽川瑠那(1978-)。 ガラス作品の公募展や国際コンクールで評価を確立したのち、現在は岐阜県高山市を拠点に、高山の風景のほか、各地に眠る戦争、公害、災害やそこに生きた/生きる人々の記憶をテーマとした制作を行っています。
 今回は、女性たちの日常をとらえた常盤の約 30 点の写真と、小曽川による新作インスタレーションを展示します。 自分自身が日々生活を送る土地によりそう、間近にありながら見過ごされてしまう命や、消えてゆくその記憶に対し、カメラとガラスというそれぞれの方法で光を当ててきた 2 人の挑戦をご覧ください。

常盤とよ子《撮影 NG》

・常盤とよ子 このコーナーの作品は、風景撮影のみとなりました。

常盤 とよ子 TOKIWA Toyoko 1928-2019 (日本写真家協会/神奈川県写真作家協会/他)

 1950 年東京家政学院を卒業、横浜の通信社でフリーアナウンサーとなる。 1951 年、後に夫となるアマチュア写真家・奥村泰宏の勧めで写真家を目指す、アマチュア女性写真家愛好家団体 「白百合カメラクラブ」 でカメラの基礎を学びコンテストに入選。 働く女性をテーマに取材を展開、横浜・真金町 (遊郭地域) での赤線地帯の撮影をはじめ、「女性しか撮れない」 彼女たちの裏面の写真は社会的評価を受けた。 横浜を拠点に活動、早くから写真家として評価を受け、1957 年、写真のエッセイ集 『危険な毒花』 を出版。 1958 年、「女性写真家協会」 を結成。 1958 年、1959 年、1960 年と続いて個展を発表。 1995 年、奥村泰宏の後を継いで神奈川県写真作家協会会長・神奈川読売写真クラブ会長。 

「略年譜の抜粋」
1928 年 神奈川県横浜市神奈川区の酒問屋「常盤屋」に生まれる。
1950 年 東京家政学院卒業。 その後、兄の友人奥村泰弘からカメラを勧められ、撮影を始める。
1960 年 個展「わたしは大臣」(丸の内コロネード)開催。 日本初の女性閣僚となった中山マサを題材とする。 横浜美術協会会員・役員、横浜美術館評議委員。
1970 年 神奈川報道写真連盟実行委員・審査委員。
1979 年 読売日本テレビ文化センター横浜教室・藤沢教室講師(~1999)。
1995 年 奥村の逝去により、神奈川写真作家協会会長、神奈川読売写真クラブ会長を引き継ぐ。
2001 年 個展「わたしの中のヨコハマ伝説」(新宿ニコンサロン)開催。 写真集『常盤とよ子写真集「わたしの中のヨコハマ伝説」1954-1956』刊行。
2018 年 横浜都市発展記念館にて「奥村泰宏・常盤とよ子写真展 戦後横浜に生きる」開催。
2019 年 12月、逝去。 享年 91 歳。



画像をクリックすると 「丸木 スマ」 の作品がご覧いただけます。

第3章 記憶にのこす 川村紗耶佳 KAWAMURA Sayaka、丸木スマ MARUKI Suma

 広島の農村に生まれ育ち、畑仕事や家族の世話に明け暮れて 70 歳過ぎた頃、画家である長男夫妻(丸木位里・赤松俊子) に勧められ初めて絵筆をとった丸木スマ(1875-1956)。 自身が暮らした山村の風景や、身の回りの動植物を、墨や水彩、クレヨンなどを自由自在に操り表現したその絵は、当時の画壇に驚きをもって迎え入れられました。
京都精華大学や多摩美術大学で木版画を学び、数多くの版画コンクールでも高い評価を獲得している川村沙耶佳(1989-) は、一貫して記憶をテーマにした制作を続けています。 作家の出身地である北海道で家族と過ごした日々の記憶は、画面上ではどこかにいる誰かのありふれた日常の一コマとして描き出され、作品の前に立つ誰でもがそこに自分自身の記憶を重ねずにはいられません。 本章では、丸木スマの女流画家協会展、院展出品作品を中心とする 11 点、川村の小品から大作まで 12 点をご覧いただきます。 描くこと、彫ること、摺ることで、かけがえのない生活の記憶が 「かたち」 として残され、その残された 「かたち」 の中から、また新たな記憶が生まれなおし続けていくことでしょう。

川村紗耶佳No.72《rain sound Ⅳ》73《Bon voyage Ⅴ》74《I dreamt of floating》

左 ・No. 74 《I dreamt of floating》 2020 年 水性木版、和紙 70.0 x 70.0 作家蔵
中 ・No.73 《Bon voyage Ⅴ》 2019 年 水性油性併用木版、和紙 70.0 x 70.0 作家蔵
右 ・No.72 《rain sound Ⅳ》 2020 年 水性木版、和紙 91.5 x 91.5 第88回版画展 作家蔵

川村 紗耶佳 KAWAMURA Sayaka 1989- (日本版画協会)

 数々の受賞に輝く川村は、一貫して 「記憶」 をテーマとしている事で、ここの展示コーナーの作品には、・No.74 画面全体を使った大柄な人物を阻む二つの縦型に並んだ大きな丸長方体や ・No.72、73 横になった三日月形の夢見る帽子に作家のみる夢と現実が重なる世界観の表現であろう、独特の木目を生かした木版画は全体を淡い色彩に摺り出され、和紙に調和して懐かしい人物像として現れ、何とも言えない対話が生まれる。

「略年譜の抜粋」
1989 年  北海道札幌市に生まれる。
2013 年  京都精華大学メディア造形学科版画コース卒業。
2015 年  多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻版画科修了。
2017 年  日本版画家協会準会員。
2021 年  多摩美術大学版画専攻助手。
現在、日本版画家協会

「個展、公募展の抜粋」
2013 年 第19回鹿沼市立川上澄生美術館木版画大賞審査委員特別賞。
2017 年 第23回鹿沼市立川上澄生美術館木版画大賞大賞。 第10回高知国際版画トリエンナーレ 土佐和紙賞。 個展(養清堂画廊、東京)、個展(アートギャラリー、群馬)
2020 年 第11回高知国際版画トリエンナーレ 大賞。 個展(ギヤラリー恵風、京都)(Gallery SATORU、東京)(ODD ONE OUT、香港)。

「パブリックコレクション」
多摩美術大学、多摩美術大学美術館、町田国際版画美術館、鹿沼市立川上澄生美術館、いの町紙の博物館、阿波和紙伝統産業会館、HOKUBU記念絵画館、上海半島美術館。  


 

お問合せ:tel 03-3823-6921
東京都美術館公式サイト: https://www.tobikan.jp
   会場:東京都美術館 ギャラリー A・C

主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館


参考資料:上野アーティストプロジェクト「Everyday Life : わたしは生まれなおしている」
プレス説明会、カタログ、2021 11月PRESS RELEASE 、チラシ、他。
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